ギリシア語文法 アクセントの法則
◆目次
◆アクセントの付き得る範囲
最後の音節をラテン語でultima(ウルティマ)と言い、
最後より二番目の音節をpaenultima(パエヌルティマ)と言い、
最後より三番目の音節をantepaenultima(アンテパエヌルティマ)と言う。
これらはアクセントが付き得る音節であり、これより前の音節にはアクセントは付かない。
[例] μαρ-τυ-ρί-α(マル・テュ・リ・ア)「証」
αがウルティマ(末節)
ρίがパエヌルティマ(次節)
τυがアンテパエヌルティマ(前次節)
ギリシア語のアクセントには「3音節リズムの法則」というものがある。
これは、一語中でアクセントの後に無アクセント音節が続くのを二拍以内に押さえるという法則である。
よって、後ろから数えて四音節以上の所にアクセントが付くことはない。
上の例では、μαρにアクセントは付き得ない。
必ずウルティマ・パエヌルティマ・アンテパエヌルティマのどれかにアクセントが付く。
アクセントの付き得る範囲は、鋭アクセント→曲アクセント→重アクセントの順に狭くなる。
•鋭アクセントはウルティマ・パエヌルティマ・アンテパエヌルティマの全てにアクセントが付き得る。
•曲アクセントはパエヌルティマ・アンテパエヌルティマの二つにアクセントが付き得る。曲アクセントの付き得る範囲が一音節狭くなる理由は、曲アクセントが前半は高く後半は低く発音し二拍と捉えられるので、もし曲アクセントがアンテパエヌルティマに付いてしまうと、3音節リズムの法則を犯すことになるからである。曲アクセントが二拍を要するということは、逆に言えば曲アクセントは長母音か複母音にしか付かないということでもある。
•重アクセントはアンテパエヌルティマにしかアクセントは付き得ない。重アクセントは文中、句読点なしで他の語が続く時は鋭アクセントを重アクセントに変えるものである。このようにウルティマに付く鋭アクセントを「鋭調語」(oxytonon)と言う。他の語が後に続かない時には鋭アクセントのままにする。
単語のアンテパエヌルティマ(末節)が長音節の場合は、アクセントの付き得る範囲が変動し、
鋭アクセント、曲アクセントの付き得る範囲が一音節ずつ狭くなる。ただし「位置的に長い」音節(二個以上の子音が続く場合)は長音節とは数えない。
◆前倚辞(proclitic)と後倚辞(enclitic)
•前倚辞とは、それ自身はアクセントを持たず、次に続く語に添えて軽く発音する語である。
•後倚辞とは、本来はアクセントを持っているが、アクセントを先行語に添えて自らのアクセントを失う語である。後倚辞は発音上は先行語と結合し、一音節として数えられるので、先行語のアクセントの付き得る範囲に影響を及ぼす。
[例] ἄνθρωπός τις(アンスローポス・ティス)
τίςには本来鋭アクセントが付いているが、先行語ἄνθρωποςのウルティマ(πος)にアクセントを譲り渡し、自らのアクセントを失う。
最終更新:2017年06月11日 02:04