ギリシア語文法 不定詞と分詞

◆目次



不定詞と分詞はある意味で動詞の法の延長上に並ぶべきものだが、
法としての完全な機能に欠けるために、正式には法として扱われない。


◆不定詞(Infinitive)


不定詞は「不定法」と呼ばれることもある。
不定詞は動詞が名詞化したもので、動詞と名詞の両方の性質を備える。
人称と性と数と格による変化がなく不定なので不定詞と呼ばれる。
また性と数を含まないので動詞の法として分類されない。

γράψαι「書くこと」


◇用法


不定詞には「副詞的用法」と「名詞的用法」がある。
  • 不定詞の主語は主文の主語と共通であれば省略される。
  • 不定詞の主語は対格である。これを「対格主語」という。
  • 不定詞は中性単数名詞として扱われ、不定詞自体は格変化しないので、冠詞によって格を表現する。
  • 不定詞の否定にはοὐでなくμήを用いる。

◇副詞的用法

  • 目的「~のために」
    • 不定詞単独で
    • 冠詞付き不定詞の属格と
    • 前置詞εἰς,πρόςと共に
    • 接続詞ὡς,ὥστεと共に

  • 結果「~の結果」
    • 不定詞単独で(用例は少ない)
    • 接続詞ὥστεと共に(用例が多い)
    • 冠詞付き不定詞の属格と
    • εἰς τὸ+不定詞

  • 原因・理由「~のため」 
    • διὰ τὸ+不定詞

  • 時間 
    • πρὶν (ἢ)+不定詞「~前に」
    • πρὸ τοῦ+不定詞「~前に」
    • εν τῷ+現在不定詞「~間に」「~している時に」
    • εν τῷ+アオリスト不定詞「~した時に」
    • μετὰ τὸ+アオリスト不定詞「~後に」
    • ἕως τοῦ+不定詞「~まで」

  • 独立的用法
    • 命令的用法「~しなさい」
    • 絶対不定詞「~すべき」

◇名詞的用法

  • 主語として「~することは」
  • 目的語として「~するようにと」
  • 補語として「~である」
  • 目的補語として「~であると」
  • 言い換え「すなわち~すること」


◇不定詞の変化


不定詞には人称や数や格による変化がありません。
不定詞は各法と、
現在、未来、アオリスト、現在完了、未来完了の時称で変化します。
未完了過去と過去完了はありません。

λύω (リュオー)解く

直説法
能動相 中動相 受動相
現在 λύ-ειν λύ-εσθαι λύ-εσθαι
未来 λύ-σειν λύ-σεσθαι λύ-θή-σεσθαι
アオリスト λύ-σαι λύ-σασθαι λύ-θή-ναι
現在完了 λύ-κέ-ναι λύ-σθαι λύ-σθαι


◆分詞(Participle)


分詞は動詞が形容詞化したもので、動詞と形容詞の両方の性質を備える。
分詞は人称を含まないので、動詞の法として分類されない。

γράψας「書いた(男)」


◇用法


  • 分詞の否定にはοὐでなくμήを用いる。

◇形容詞的・名詞的用法


形容詞の用法と同じく、「属格的位置」と「述語的位置」がある。
分詞が冠詞の中に用いられている場合は「属格的位置」に、
分詞が冠詞の外に用いられている場合は「述語的位置」になる。
詳しくは「形容詞」の頁を参照。

  • 属格的位置
    • 「~している(名詞)」
      • 冠詞・分詞・名詞の順
      • 名詞・冠詞・分詞の順
      • 冠詞・名詞・冠詞・分詞の順
      • 無冠詞で名詞・分詞または分詞・名詞の順
    • 「~している(者)」(名詞化)
      • 冠詞・分詞だけ
      • 分詞だけ(冠詞が省略される場合もある)

  • 述語的位置
    • 「(名詞は)~している」

分詞の述語的位置では、εἰμί(~である)+分詞による組み合わせによる表現がある。
本来動詞一語で表現できるものを、回りくどく分詞によって表現する用法である。
この場合、動詞一語よりも絵画的で印象深い表現となる。
このような用法を「迂言法」または「ペリフラシス」(periphrasis)と言う。


◇副詞的用法

  • 時間
    • 現在分詞「~する時・・・」(述語動詞と同時進行していることを表す)
    • アオリスト分詞「~した時・・・」(述語動詞の動作に先行する)
  • 条件「~するなら・・・」
  • 譲歩「~なのに・・・」
  • 原因・理由「~なので・・・」
  • 目的「~のために・・・」
  • 手段「~によって・・・」
  • 仕方・様子「~という仕方で」「~という様に」
  • 動作の連続「~て(・・・した)」


◇分詞の変化

分詞には人称による変化がありません。
分詞は各法と、
現在、未来、アオリスト、現在完了、未来完了の時称で変化します。
未完了過去と過去完了はありません。

◇ω動詞の現在分詞
■直説法
□能動相・単数
男性 女性 中性
主・呼 -ων -ουσα -ον
-οντος -ουσης -οντος
-οντι -ουση -οντι
-οντα -ουσαν -ον

□能動相・複数
男性 女性 中性
主・呼 -οντες -ουσαι -οντα
-οντως -ουσως -οντως
-ουςι(ν) -ουσαις -ονσι(ν)
-οντας -ουσας -οντα

□中受動相・単数
男性 女性 中性
-ομενος -ομενη -ομενον
-ομενου -ομενης -ομενου
-ομενω -ομενη -ομενω
-ομενον -ομενην -ομενον
-ομενε -ομενη -ομενον

□中受動相・複数
男性 女性 中性
主・呼 -ομενοι -ομεναι -ομενα
-ομενων -ομενων -ομενων
-ομενοις -ομεναις -ομενοις
-ομενους -ομενας -ομενα

◇ω動詞の未来分詞
□能動相・単数
□能動相・複数
□中動相・単数
□中動相・複数
□受動相・単数
□受動相・複数

◇ω動詞のアオリスト分詞
□能動相・単数
□能動相・複数
□中動相・単数
□中動相・複数
□受動相・単数
□受動相・複数

◇ω動詞の現在完了分詞
□能動相・単数
□能動相・複数
□中受動相・単数
□中受動相・複数

■接続法
■希求法
■命令法


最終更新:2017年06月11日 02:11