シミュレーションセンター建物の設計(新築の場合)

設計の基本方針

  • 所属施設の臨床現場をなるべく忠実に再現する。
    • 現状に縛られる必要はなく、近未来を想定して手を加えることも可
  • 誰に設計を依頼?(設計会社)
    • 学校など教育施設やオフィスを設計する人だけでなく、病院設計を手がけたことがある人に相談し意見を取り入れるべき。
  • 実際の施設基準などを満たすようにする。
    • 病室:患者1人当たり6.4平方メートル以上
      • 附属病院の標準的な個室をそのまま再現【聖路加国際大学】
    • ICU:20m2以上(個室25m2)、廊下幅2.4m以上を推奨
    • 手術室:TAVR対応は60m2以上
  • 患者診療エリアから優先的に配置していく
    • 会議室・講義室は他にいくらでもあるが、手術室などの診療設備は代用できない。
      • ある程度の汎用性を考える必要はあるが、専門性を持った価値のあるスペースにする。
    • 患者へのリスクを軽減を目標とするなら、患者と接する環境から攻めるのが合理的
    • 患者エリア>スタッフエリア>後方支援エリア
    • つまり病床・診察室・手術室>ナースステーション>調剤室・検体検査室・滅菌室
  • 模擬的であっても、診療施設として理にかなうよう、複数エリアの協調性を意識する
    • 待合→診察室→病棟→手術室→ICUといった患者の診療の流れや動線についても考慮

場所

  • 臨床現場と適度な距離感が必要(物理的な距離とは限らない)。
  • 気軽に利用できるが、現場での業務とはっきり区切る必要がある。
  • 遠すぎるとなかなか利用してもらえない。敷居が高くなる。
  • 近すぎても現場業務に引き戻されてしまったり、気が散ってしまう。
  • 実際の現場を間借りするin situでは、シミュレーション中の診療業務を完全免除するなどトップダウンで「距離感」を作る必要がある。
  • 職員から「遠い」との苦情あり。本院〜センターは約2km。主な関連病院からの距離は1.6km、3.5km。【ペンシルベニア大学】

時期

  • 開業前に少なくとも1ヶ月の猶予期間を設け、備品類の調整や動線の確認、スタッフの訓練を行えるようにする。
  • 新年度(4月)オープンなら、遅くても2-3月からスタッフを施設に入居させ調整を始める。
  • 教育カリキュラムの申請・公開などは前年度に行う必要があり更に遡って検討する必要がある。

広さ

  • 最低限のインフラ(トイレ・受付・事務室・更衣室等)を確保
  • 収納スペースは、施設面積の15-20%を目安に確保したい。随所に棚やクローゼットなど収納を配置する。
  • 旧病院の手術室フロアをまるごと改装して使用、2,044m2 (22,000ft2)【ペンシルベニア大学】
  • 大学に隣接した敷地(駐車場)を買収して複合施設を建設、シミュレーションセンターは4階部分を専有。建ぺい率などの都合で面積は約864m2【聖路加国際大学】

施設に関する事前の重大な方針決定事項

  • 診療使用の有無(緊急時などに患者受け入れを行うか)
    • 緊急時含め診療は行わない。急患・災害が発生したら、直ちに病院に搬送・移動する。【聖路加国際大学】
    • 通常は診療を行わない。緊急時は州知事の要請があれば、傷病者を受け入れ応急処置を行える。【南フロリダ大学CAMLS】
  • 動物実験の有無(生きた動物を扱うか)
    • 小動物(マウス・ウサギ程度)・大動物(豚など)
  • 放射線機器使用エリアの有無(壁・窓の放射線防護を行うか、放射線管理区域の申請を行うか)
    • 「放射線管理区域」の設定
      • 労働安全衛生法などでは3ヶ月間に1.3mSv
      • 医療法では1週間に1センチメートル線量当量300µSv)を超えるおそれのある区域
    • 胸部X線写真1回の被曝量を0.1mSvとした場合、撮影枚数によっては管理区域には該当しないが、放射線機器を設置する以上、「超えるおそれがある」ので管理区域を設定した方が無難。放射線科・放射線技師と要相談。
  • 医療ガス配管の有無
    • 吸引・空気
      • コンプレッサ等で双方とも供給可能。圧縮空気はボンベでの供給も可。
    • 酸素:トレーニング目的での使用はグレーゾーン。
      • 主目的は人に吸わせるためではなく、医療ガス設備の安全管理の教育と、正常な動作にガスを必要とする医療機器(麻酔器・人工呼吸器など、特に酸素センサが入っている物)を駆動できるように設置している。
      • 酸素投与は医療行為と捉えることも可能。しかし、市販の酸素缶(酸素2-10L含有、時間は3分程度)などは健康器具であり、一般人が自らの判断で吸入したり、他人に与えることができる。
      • 実習の前後に医師の判断で酸素シャットオフバルブの開閉操作を行い、使用する期間について最小限に留める配慮が必要であろう。
    • 二酸化炭素
      • 内視鏡・腹腔鏡のトレーニングに有効。ボンベを使う場合もあるが、配管の方が安全。
    • 笑気:トレーニング目的での使用は危険で不要。
    • シャットオフバルブは手術室等同様、良く見える場所の壁面などに配置
  • 医療ガスボンベ使用の有無
    • ボンベの保管場所、容量、交換の頻度・コスト
    • 最大想定流量(例:15LPMを3カ所、20分間=900L)
      • 搬送用に使うような酸素ボンベは約500L。据え置き型の大きめのボンベは6000-7000Lある。
  • 将来的な増改築の有無
    • ハイブリッド室への改装など大型機器を搬入する可能性がある場合、床・天井の耐荷重を想定した構造設計を行う必要がある。

削減可能な設備(診療を行わない場合)

  • 空調:必ずしも高レベルのクリーンルームにする必要はない。
  • 電源:必ずしも無停電電源である必要はない。
  • 水道:必ずしも滅菌水である必要はない。

大型の機器

  • 業務用冷凍庫:食肉や臓器等を試用する場合、保管場所として冷凍庫が必要。設置場所の近くに解凍を行えるシンクなど水回りの手配も必要。
  • 最近のVRシミュレータ類は、それぞれが電源とLAN配線を要する。場所だけでなく、コンセントなどの配置も考慮する。

電源設備

  • 電源の容量など、実際の臨床設備と同様に設計すれば問題ないはず。
    • 一般的な手術室の電源容量は1室あたり10kVA程度あれば良いらしい。
    • 省電力化が進んでいるが、CTやアンギオ装置などの設置を見込む場合、機種により100kVA以上の容量を見込んでおく。
  • 模擬停電機能
    • 特に3.11以降、地震・停電の実践的な訓練を行うことを前提とすべき。「想定外」とならないように。
    • 電源の種類に細かい区別はあるが、少なくとも通常(停電する)と非常用(停電しない)コンセントの差について教育できるようにする
    • 模擬停電・復旧を行う場合、安全のため該当エリアを目視できる位置にスイッチ等を配置する

教室

  • 想定される最大の受講者数に合わせる。例えば一学年の大きさ(約100名)など。
  • 想定される教育内容(BLSなど)を例に、受講者の動線を考慮。
  • 講義等は必ずしもシミュレーションセンター内で行う必要はない。

トイレ

  • 受講者数に合わせる。他フロアのトイレ併用も考慮。
  • 模擬エリア内にトイレを設ける場合、配管などの都合を考慮。別途トイレがあれば、陶器のみの模擬トイレという選択肢もある。

エレベーター

  • ベッド搬送(そもそもベッドの納入・搬入)が可能なサイズのもの(つまり、院内と同じサイズ)。
  • 関連して、廊下やドアも間口や開口方向など、ベッドの搬入・搬出が可能で経路も確保されることを確認する
    • 消防法等、防火目的でドアの種類、開放機能の有無が制限されることもある。

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最終更新:2014年12月16日 00:59