第六話「宣言」

脚本:高橋ナツコ/絵コンテ:川口敬一郎/演出:又野弘道/作画監督:小山知洋・菅野芳弘・青井清年・山崎展善・丸山匡彦・楢澤雄二

三成に続き、家康にも敗れ、失意の政宗を立ち直らせるため、小十郎は、政宗に初陣の際に誓った決意を思い出させる。
一方、幸村もまた、かつて佐助に誓った決意を胸に西軍合流のため大坂城へと向かう。
かたや長曾我部元親は黒田官兵衛の鍵を見つけ出す為に、鶴姫の元へ。
その頃、地下牢に囚われたお市は、徳川家康の血塗られた宿命を見る。
徳川家康、石田三成、避けることのできない決戦に向け、東西両軍の陣営が固まりつつあった。
(アニメ公式サイトより引用)


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※このページでは検証目的で「戦国BASARA Judge End」(テレコム・アニメーションフィルム制作)の映像を一部引用しています。
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・以下アニメの疑問点を紹介

+  主君を突然タメ口で幼名呼びし暴行を加える片倉小十郎
 主君を突然タメ口で幼名呼びし暴行を加える片倉小十郎
「うるせえ!その腐った根性叩き直してやる!」
との言葉は、主君を諌める為と言うには乱暴すぎる上に、相手への敬意を全く感じない。
片倉小十郎は政宗のためとあればたとえ政宗自身に対しても容赦しない人物であるが、
ただ暴力に訴えるようなやり方は決してせず、仮に強硬手段に出るとしても必要最小限に抑えるキャラクターである。
また、諌める時に幼名呼びになったり敬語を使わなくなるような設定は存在しない。
自分に対する侮辱よりも政宗に対する侮辱に怒る小十郎が
衆人環境において政宗にタメ口をきき幼名で呼び暴力を振るうなど、全てに違和感を禁じえないくだりであった。

陣羽織を鷲掴み、この直後頭突きをする小十郎
「うるせえ!」の言葉と共に政宗を殴る小十郎

+  主君である政宗に敬語を使わない伊達兵(回想)
 主君である政宗に敬語を使わない伊達兵(回想)
基本的に伊達軍は、気性が荒っぽく畏まった言葉の使い方が分からないという兵以外は、政宗や小十郎に対してきちんと敬語を使う。
畏まった言葉を使えない兵士たちも、2人に対しては敬意が表れた言葉遣いをする。
また、兵が原作のようなヤンキー風ではなく一般的な足軽に変更されている為、突然のくだけた口調につき違和感がより強まっている。
戦国BASARAにおける設定以前に、戦国時代の常識からも考えられない斬新な発想だと言える。

+  自ら戦わない伊達政宗(回想)
 自ら戦わない伊達政宗(回想)
初陣の回想シーンにおいて、伊達政宗は部下達が危険な状態で戦っているにも関わらず
陣幕の裏に引っ込んで座っており、前線に出ることはなかった。
ゲームでの政宗は大将であるにも関わらず、誰よりも先陣を切って敵陣に突っ込んでいくキャラクターである。
ちなみにゲームの脚本を手掛けた林直孝・瀧本正至の脚本によるドラマCD「蒼穹!姉川の戦い」において
政宗の初陣前夜のエピソードが描かれているが、その中で政宗は戦場に出ることに反対する片倉小十郎に対し、
「領主が城に閉じこもって部下にだけ戦わせていても、誰もついてこねえ!何よりオレには領主としての責任がある!」
と語っている。

床几に座るのみの政宗と、政宗の左側に立つ小十郎

+  無意味な意地により部下を死なせる伊達政宗(回想)
 無意味な意地により部下を死なせる伊達政宗(回想)
原作ゲームにおいては初陣の戦はいまだに描写されていないため、
かつての未熟な伊達政宗の行動として絶対にあり得ないとは言い切れない。
しかし、上記のドラマCD「蒼穹!姉川の戦い」の中で描かれた初陣前夜における政宗からは、
領主としての責任や領民の平和について説くなど、既に上に立つ者として成熟したキャラクター性が見てとれた。
このような未熟で自分勝手な人物像とはやはり乖離があるのではないかと指摘できる。

+  やはり突然主君を幼名で呼びタメ口をきき腹に一発入れる片倉小十郎(回想)
 やはり突然主君を幼名で呼びタメ口をきき腹に一発入れる片倉小十郎(回想)
小十郎が政宗を諭す時は、「幼名呼びで敬語を使わず暴力に訴える」という法則があるかのように見えてしまうが、
ゲームにそんな設定はない。戦国時代における主従関係というものを履き違えた描写であると言える。
小十郎のタメ口は戦国BASARA4において描かれた伊達主従の過去を下敷きにしたものであると推測されるが、
あれは信頼関係を築き主従となる以前の状態だからこそ、現在との対比として活きた描写である。
また、小十郎の暴力描写は「その荒さこそがあの日梵天丸を救った」との政宗の言葉を元にした可能性も考えられるが、
それは梵天丸を侮辱した家臣に対し、小十郎が制裁を加えたエピソードを指しているものである。


+  樹木に頭を打ち付ける伊達政宗(回想)
 樹木に頭を打ち付ける伊達政宗(回想)
伊達政宗は強い感情ほど抑えた表現をするキャラクターであるため、
このような行動で後悔を表現することが果たして適切であるのか疑問である。
政宗の人物像以前に、人間の行動としてどうなのか。

呻きながら木へ頭を打ち続ける
涙を滲ませる政宗
その後胸ぐらを掴む小十郎

+  伊達主従にとって重要な台詞の改変(回想)
 伊達主従にとって重要な台詞の改変(回想)
「よく聞け梵天丸!俺は死を恐れたことはねえ。だが死ぬ覚悟で戦場に立ったことは一度もねえ」
回想シーンにおいて片倉小十郎が伊達政宗を諭すために放った台詞である。
これはゲーム戦国BASARA2における片倉小十郎の台詞
「死ぬ覚悟は出来てる…だが、死のうと思ったことは一度もねぇ」
戦国BASARA2英雄外伝における伊達政宗の台詞
「オレは死を恐れねえ…だが、死のうと思ったことは一度もねえ!」
上記のどちらか、あるいは両方が元になっていると推測されるが、見ての通り意味が真逆になっている。
「戦場で死ぬ覚悟がない」との宣言がまるで良いエピソードのように扱われており、キャラクターや台詞の意味への理解が明らかに不足している。
(小十郎の左前設定は要出典)

+  インスタントすぎる伊達政宗の立ち直り
 インスタントすぎる伊達政宗の立ち直り
数話かけて迷走し乱心描写が続いていた伊達政宗であるが、ほんの数分で完全に立ち直った模様である。
キャラクターを描くためにストーリーがあるのではなく、ストーリーの都合でキャラクターを動かしているかのような、
ご都合主義的な印象を禁じえないあっけない幕切れであったといえる

+  伊達政宗の再起に結び付かない回想シーン
 伊達政宗の再起に結び付かない回想シーン
政宗は片倉小十郎に幼名呼びで殴られ、初陣を回想することによって立ち直ったように見受けられる。
しかしその回想シーンにおいては、JEの政宗が初陣の頃から自分のことしか考えない暗君であったことを描いただけであり、
また片倉小十郎の暴力を伴う叱咤も、「俺は戦場で死ぬ覚悟がない」という武将としてあるまじき宣言をしたのみである。
単騎で三成に敗北しただけの挫折とは状況が違い、天下への想いを再び想い出すような要素も見当たらず、
復讐心から迷走している政宗にこうした初陣での失態話をオーバーラップさせた意味が不明である。
そもそも今回の敗北で政宗があそこまで狂った理由も描かれておらず、彼が何を乗り越えたのかすらもわからない。
ちなみに戦国武将は初陣の時点ではすでに元服を済ませているものであり、あえて幼名呼びを出した演出の意義も謎である。

+  動きのおかしい戸
 動きのおかしい戸
信玄が床に就いている部屋へ幸村が戸を開いて入るという場面だが、この時戸を開くのは床に伏す信玄にかかる影で描写されている。
が、この幸村の影が戸を開く動作をしていないにも関わらず戸が開いている。勿論戸の付近には幸村以外描写されていない。
まるで自動ドアのようなこの演出は、明らかにおかしいと言える。

+  出会いのエピソードを改変された真田主従
 出会いのエピソードを改変された真田主従
原作の設定では猿飛佐助は、過去において人間らしい感情を持たない「鵺」を自称しており、
真田幸村・武田信玄との出会いによって初めて光を得たキャラクターとなっている。
このアニメにおいては雇い主であった武田信玄に言われて幸村の力量を図った結果、彼と主従関係を結んだことになっており、
幸村との出会いの時点での振る舞いは極めて真っ当な人間のようであるなど
出会いのエピソードが根本から改変されている。
そしてこの時、幸村は物理的に炎へ槍先を突っ込み火をつけている。この演出も意味不明である。

+  幽閉されるお市
 幽閉されるお市
家康に保護されたはずのお市だが、魔の手にクナイを刺されて押さえ付けられ、終始見張りがついている状態であった。
原作では戦場に着いてこようとするお市を心配した家康が、危ないから大人しく城にいるように、と優しく忠告するシーンはあるが
このように自由を奪われる様子は無く、最終的には家康が、自らの側から離れないように守ろうとさえしていた。
保護されているという感覚ではなく監視されているような状態であり、原作の家康の懐の大きさや優しさといったものが表現出来ていない。
そして家康は「しっかりしてくれ、お市殿」と声をかけているが、幽閉監視しクナイで魔の手を拘束している状況を考えると
家康のキャラクター性を無視した非情な言葉であり演出ではないだろうか。


見張りと思われる忠次と風魔

+  第5話で政宗に負けたのに第1話で政宗を瞬殺した三成と対等に渡り合う幸村
 第5話で政宗に負けたのに第1話で政宗を瞬殺した三成と対等に渡り合う幸村
相性などでは説明しきれない矛盾であり、整合性に考慮が及んでいない可能性がある。
他にもこれまでのところ、石田三成と長曾我部元親、石田三成と猿飛佐助が互角に渡り合う様が描写されているが、
彼らと伊達政宗との間に明確な力量差がある設定はない。
また、政宗と同様に第1話で三成に瞬殺された片倉小十郎には、剣の達人という設定がある。

+  何故西軍についたのかよくわからない真田幸村
 何故西軍についたのかよくわからない真田幸村
真田幸村は石田三成に戦いの先をどう見据えているかを問いただし、三成が天下はどうでもいいと考えていることを知り、
そうした考えを否定して斬り合いとなった。
(なお、第3話において三成は、力によって天下を治めようとしているとの説明されており、今回のシーンとは矛盾している)
そして大谷吉継に止められて衝突が中断したのち、彼は西軍につくと宣言している。
理由は「石田三成が自分と同じだから」であるそうだが、一連のやりとりの中のどこにそう思う要素があったのか不明であり、
描写不足により思考過程が意味のわからないものとなってしまっている。

+  幸村の口調
 幸村の口調
相変わらず語尾が「ござる」一辺倒になっており、口調も直接的且つ砕けた言い回しの印象を与える台詞となっている。
最終更新:2014年09月22日 20:00