【MAGICAL COLUMN】あるなしクイズ編

「あるなしクイズ」は・・・

 

ブームとなった1991年~1992年頃は、番組の枠を超えて『笑っていいとも!』など他局の番組でも扱われ、新聞・雑誌でのパズルコーナーではクロスワードパズルと肩を並べてあるなし問題が掲載されたり、あるなし関連のパズル本も多数出版された。それらの多くは「ある・なクイズ」「あるなしパズル」など、このパズルの名前に関して微妙に言い回しが異なるのだが、「あるなクイズ」という名で広く定着しているのは火付け役となった『マジカル』の影響によるものではないだろうか。

 

元々あるなし1問に手がかり(例題)の数は3個程度だったようだ。手がかりの表記も、従来の「シカにはあるが、ウマにはない。」というような文章の形ではなく、

あ  る な  い
シ カ ウ マ

と手がかりとなる言葉だけを羅列した形で表し、手がかりの数が1問につき5~8個程度まで増えた形で定着したのもマジカルで「あるなしクイズ」が居残り早押しクイズ形式で大ヒットした影響によるものだろう。
※ちなみにタイトルは「あるなクイズ」ではあるが、「マジカル」では原則、言葉のみでの手がかりの表記の際に「ない」側を「なし」とは表記しない。

 

 

「あるなし」の原点

元々「あるなし」問題は手がかりとして提示されている言葉の文字からではなく、提示されているそのもの自体の形なり特徴なりを思い浮かべる「想像力」に重きを置いたパズルだったようである。

例1

あ  る な  い
ピアノ 尺 八
マンホール 下水道
牛乳ビン 花ビン
風 呂 シャワー
弁当箱 割りばし
万年筆 手 紙
おたま

答え:「ある」方の物にはフタがある(第81回・1993年12月18日放送より)

例2

あ  る な  い
あ い こ い
ねずみ ね こ
ダイヤモンド
オレンジ パイナップル
茶菓子
シロ・クロ ポ チ
きみどり アホウドリ

答え:「色」の種類にあるもの(第30回・1991年11月9日放送より)
※「あい」は「愛」ではなく、「藍(あい)」と変換して解釈する必要がある。


例1のように「手がかりとして提示されたモノの中に何かある(含まれている)」または例2のように「手がかりとして出されているモノが何かの中(種類など)ある(含まれている)」、もう一方にはそれがない。それとは何かを当てるというのが「あるなし」のスタンダードな出題の形である。当然答えも「○○あるもの(とないもの)」「○○あるもの(とないもの)」という言い方をしても文章が成立する形になる。あるなしクイズの「あるなし」とは、本来は「それらの中に何かが存在する」「何かの中にそれらが存在する」という「存在する・しない」という意味の「あるなし」なのである。

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「あるなし」は知識クイズでも”ある”

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例3

あ  る な  い
太 陽
砂 浜 海 面
カラス カモメ

答え:足あと(第23回・1991年5月25日放送より)

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知識がないと答えられないが、それでも「あるなし」として十分成立している問題である。
初期の書き問題形式で表示されていたパワー・チャートは、ひらめきが重要な「発想パワー」とほぼ同じぐらい「知識パワー」の数値も高かった。

 

新たなパターン(くっつき・隠れ)の登場で進化する「あるなし」

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このパターンが出始めた当初は、「ある/ない」ではなく「できる/できない」という言葉でグループ分けをしていた。これらのパターンの登場によって、あるなしクイズの「あるなし」の意味が「何かしらの共通点が”ある”、もう一方には”ない”」と広い解釈の仕方になっていったように思える。

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「ない」方にも立派な存在理由が”ある”

あるなしクイズで提示する手がかり(例題)は基本、「Aにはあるけど、Bにはない」という形で、かつAとBの言葉には何かしらのつながり・関係性があるようにしなければならない。あるなし問題は「『ある』方の共通点を探し当てる」ものが多いため、『ある』方だけに目を向けていれば答えを導きやすいことから、『ない』方は不必要ではないかと思うかたもいらっしゃるだろうが、そんなことはない。・・・

あ  る な  い
ダイヤ タイヤ
バ チ 太 鼓
石けん しゃぼん玉
タバコ ストロー
ゴルフボール ピンポン玉
雪だるま だるま
いかだ ゴムボート
地 球 地球儀
そ ば マカロニ
ポスト できたばかりのポスト

答え:中身があるものとないもの(第42回・1992年2月22日放送より)

 

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あ  る な  い
漢 字 か な
京 都 奈 良
乳 母
背 中
しょうゆ
お の か ま
カラオケ

答え:(「ない」方のお尻に)「わない」のつく言葉(第47回・1992年4月18日放送より(一部))

 

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あ  る な  い
トップ ビ リ
キップ チケット
コップ カップ

(第49回・1992年5月23日放送より(一部))

この問題の答えは、「頭に『す』のつく言葉(ストップ、スキップ、スコップ)」であるが、この3項目の段階で「ある」方の言葉だけを見ると「最後2文字が『ップ』である言葉」という答えでも成立する。しかし、「ない」方の項目の中に「カップ」があるので正解とはならない。・・・

 

法則を凝るなら、例題を凝れ。

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良質な「あるなし」問題とは・・・

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あ  る な  い
葉っぱ 木の実
サザン ユーミン

答え:かけ算の「九九」
肉→2×9(にく)=18、葉っぱ→8×8(はっぱ)=64、サザン→3×3(さざん)が9
(第17回・1991年3月2日放送より)


この問題は、小学生でもわかる題材かつ答えとなる法則が複雑ではなくシンプルであること、くっつきや隠れといった独特なパターンを用いないことで「あるなしクイズ」そのものを知らない人でも解きやすい、しかしながら同音異義語の言葉遊びを用いた絶妙な加減のひねりがあることなどからか、テレビのクイズ番組やパズル本で「あるなし問題」を扱うときは手がかりとなる例題の言葉のチョイスこそそれぞれ違うものの、基本問題としてこの形の「九九あるなし」を見かけることが非常に多い。それだけきれいに整った「あるなし」のお手本のような問題なのだろう。

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手がかりの個数は3~5個程度。答え(法則・共通点)はシンプルにかつ1つに限定できること。文章でのヒントは出来るだけ少なく、手がかりの言葉を見るだけでその答えに導ける形が望ましい。
くっつきや隠れなどの言葉や文字から導くパターンの問題は、テレビ番組(テロップ)・書籍やWebページなど、活字の世界で出題するには良いかもしれないが、出題する側・答える側ともに紙などに文字を書く必要があるものよりは口頭での出題だけでも十分伝わって考えられる問題の方がベストのように思える。
そうなると、オーソドックスな本来の「あるなし」がやはりこのパズルの形としては最も良質なのかもしれない。

最終更新:2017年05月02日 21:29