セイヴァー編第0話


最終大戦と呼ばれる戦争、それに呼応するかのように姿を現した未知の生命体『ネフィリム』。


人類の天敵となったその存在に呼応するかのように現れた
超常的な力と常識から外れた色素を持つ存在が『オーダー』である。


オーダー達の人権を守るために設立された組織『GARDEN』は
ネフィリムと戦うこと、そしてオーダーの人権保護を生業として日々の任務をこなしている。


この物語はGARDENの支部の一つである「関東支部」へ別の支部から一人の青年が転任したことから始まる___


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Chapter1 『始まりはチアガールと共に』


眩しいくらいの笑顔を見せる美少女メイド___


秋葉原の一角に存在する看板に大きく掲げられたメイド喫茶やミリタリーショップを持つ雑居ビル、
その前に180cmは優に超すであろう身長のメガネをかけた男が立っていた。


???:「ほう・・・ここがおいらの新しい拠点・・・」


ビルをしげしげと眺めるこの男の名前は『矢田隼太』、超常の力を使う『ORDER』でありアニメや漫画などをこよなく愛す所謂オタクである。

季節は初夏、土曜の朝であり人の往来も少なくはない。
隼太が看板の開店時間と自身の腕時計を見比べると、看板には「OPEN:10:30~」の文字が書かれており、腕時計には「08:52」と表示されていた。
こう聞くとメイド喫茶に訪れようとしてOPEN時間よりも早く来てしまったように感じられるがそうではない。

実はこの何の変哲もない雑居ビルが『GARDEN』の関東支部なのである。
元々GARDENの別支部に所属していた隼太は関東支部に転勤となり、その日から関東支部で働くことになっていた。
9時前にここに来たのもGARDENから9時にここに来るようにと指令を受けていたためである。


隼太:「ふっ・・・ここで一般ぴーぽーはそわそわしながら時間を待つ出やんすが、おいらは違う・・・!」
隼太:「新たなおいらの戦場となる街は当の昔に把握済み!2つ隣のビル裏に休憩所があるでやんす」
隼太:「そこの自販機で闇鍋風おでん缶を優雅に食べながら待つ、それが通よ・・・!」
隼太:「さあ行かん!完璧なる計画(パーフェクトプラン)、その一歩に!!」


一人でぶつぶつ呟く隼太を怪訝そうに見て足早に去る周囲の人を無視し、
隼太は完璧な計画(自称)を立てて実行に移そうとしていた。

しかし、


???:「あ、あの~・・・」


きぃ、と音を立てて入口の木製の扉ひょこっと顔を出た少女によって最初の一歩から完璧(笑)な計画は頓挫することになった。


隼太:「おぉうふ!?(ズッコケ) おいらの完璧なる計画がぁ乱されたでやんすぅ!?」
隼太:「一体何者(少女を見て)・・・イナフ!!」


隼太の目に入ったのは、看板に描かれた人物であろう少女であり、
その服装はメイド喫茶・・・よりはコスプレ喫茶に近いのかチアガールの格好をしていた。

脇が眩しい、隼太の心はそう叫ぶ。


???:「今日から関東支部配属予定のコールサイン"サーチャー"さんですよね?」


秋葉原の土地柄か、この手の客の扱いには慣れているらしく少女は笑顔で隼太にに問いかけた。


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補足となるが、少女が言った『コールサイン"サーチャー"』について。

GARDENではオーダー同士が本名で名前を呼びあうことは少ない、
これはオーダーの情報が政府で一括管理されており、誰でもその情報を閲覧することが可能であるため
所属するオーダーの安全確保を目的として『コールサイン』を決め、身元が判明しないようにするためである。
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隼太:「そういう君はビル上の看板娘ちゃんじゃないでやんすか、おいらをご存じとは光栄でやんす」
???:「関東支部所属"ディストリビューター"です。長いので名前の"朝倉千夏"でも構いません。好きなように呼んでくださいね」


少女は周囲を確認して本名の部分だけ小声で言い、


千夏:「サーチャーさんのご活躍は関東支部にも届いていますよ。これからよろしくお願いしますね」


仕事用の営業スマイルではなく、これから一緒に仕事ができるのが嬉しいのか隼太に心の内からの笑顔で笑いかけた。


隼太:「よろしくでやんす! 名前は君の迷惑にならないよう他人が居るところでは『ディーちゃん』、
そうでないところでは『ちーちゃん』と呼ばせててもらうでやんす!」

千夏:「はい! さあ、パースエイダーさんがお待ちですよ。行きましょう」
隼太:「了解でやんすよディーちゃん」


千夏は隼太の提案に元気よく答え、隼太の手を取り中へ促し、隼太も誘われるままビルの中に入る。

店内はコーヒーの香りが空間を満たし、バラード系のアニメソングが静かに流れており
開店前なので、客がいないのは当然としても不思議な雰囲気を醸し出している。


隼太:「ほう、あえて店は正統派とすることで従業員を映えさせるという(じろじろ)・・・

千夏:「少し急なので、足元に気を付けてくださいね」

隼太:あ、分かったでやんすよ」


始めてみる店内を観察しようとした隼太だが、千夏は隼太の手を取ったまま進むためそれ以上の観察は諦めた。

地下へと続く階段を降りると、二人の前に重厚な扉が姿を現す。
千夏がパスワード、指紋認証、網膜認証を行うと「ピッ」 という機械音の後、かちゃりと鍵が開いた。


千夏:「さあ、行きましょう」
隼太:「地下に厳重なチェックのある秘密の基地への入り口、ロマンでやんすね・・・」(ウンウン)


こうして隼太は新たな職場となる関西支部、その内部へと足を踏み入れていった___






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Chapter2
最終更新:2017年08月15日 01:39