セイヴァー編第0話


前Chapterの簡易的なおさらい

関東支部に転任してきた矢田隼太はチアガール少女に連れられて本部に入ったのであった


登場人物名 コールサイン
朝倉千夏 ディストリビューター
矢田隼太 サーチャー



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Chapter2 『説得者と老兵と、ほんわか少女⇔ヤンキー少女』


地下の重厚な扉を抜けた矢田の目に入ってきたのは近未来的な設備ではなく、過ごしやすそうなラウンジに近い部屋であった。
部屋の真ん中にはガラスの机、そしてそれを取り囲むようにフカフカ感MAXの思わずダイブしたくなる黒いソファ。
周りにはPC機器が設置された机やテレビ、キッチンスペースまで備わっており、
窓が一切ないことと壁一面の巨大なプロジェクタースクリーンがあること、奥にオフィスのような部屋があることを除けば
誰かの家に招待されているのではないのかという錯覚すら覚えそうな場所である。


???:「やあ、ようこそ。関東支部へ」


そのくつろぎスペースと言うべき場所の奥から、金髪で眼鏡をかけた知的な男が隼太を出迎えた。


隼太:「コールサイン『サーチャー』、矢田隼太でやんす!本日よりよろしくお願いするでやんす!」
???:「私が関東支部長のパースエイダーだ・・・本名は甲斐弦三だがね。」


弦三はそう苦笑しながら「立ち話も何だ。かけてくれたまえ」と隼太にソファに座るよう促した。


隼太:「それでは失礼するでやんす。」


隼太が遠慮なくボフンと聞こえてきそうな勢いでソファに腰かけると同時に千夏が目の前に珈琲を置く。
部屋に入って隼太と弦三が挨拶を交わす間に用意していたらしい、手際の良さから彼女は普段弦三の補佐をしているのだろう。


千夏:「珈琲で良かったでしょうか。紅茶やジュースもありますけど」
隼太:「ふっ、いいでやんすよディーちゃん。 今日はハードボイルドな気分でやんすからね。 苦くブラックでいくやんす・・・(キリッ)」


カッコつけているが、コミカルな隼太のキメ顔にクスクスと笑むと、スティックシュガーとミルクは敢えてそのままに、千夏は弦三の後ろに下がった。
弦三もテーブルを挟んで君の正面に腰かけると、眼鏡を取り、目頭を揉みながら話を切り出した。


弦三:「さて、ちょっと困ったことになってね・・・」
隼太:「まあおいらたちが働く時なんて大体が困ったことでやんすけどね、どういう方面での困りごとでやんすか?」
弦三:「本来ならば、君ともう一人、本日配属の人間がいるのだが、時間になっても現れず、連絡も取れなくなてね。」
隼太:「トラブルでやんすかね? 連絡してこないのも変でやんすし・・・」


自分と同期となる姿もわからぬ人物に思いをはせながら、隼太はコーヒーを(矢田的に)優雅にすする。

・・・・・

矢田隼太の飲む関東支部のコーヒーは、苦い。


弦三:「仕方ない、彼への対応はこちらで検討しよう。 時間も惜しいし、始めてしまおうか。」
隼太:「仕方ないでやんすね。」


パースエイダーが千夏に指示を出すと千夏はクリープとスティックシュガーをチラチラ見る隼太を尻目に
奥のオフィスへぱたぱたとかけていき、オフィスにいるメンバーを呼びに行った。


しばらくして現れたのは、身長186cmの矢田と同じくらいかそれ以上の身長を持つ大柄な老紳士と
その後ろをちょこちょこと小動物みたいについてくる千夏と初対面の少女の2人だった。

しかし、隼太は初対面であるはずの少女に既視感を感じた。
関東に来てからの日常の記憶を思い出しても彼女と会った記憶はない。
隼太は勘違いだと結論付けた。


???:「君が"サーチャー"こと隼太君だね、活躍は聞いているよ。」


老紳士は穏やかな口調で矢田に語りかける。


隼太:「よろしくでやんす、お二方は?」
???:「関東支部所属"老兵のオズ"ことオズワルド・デルゼだ、"オズ"で構わないよ。 そしてこちらが・・・」
???:「はいっ!椎名美紀です!」


老紳士の自己紹介に続き少女が右手を上げてぴょんぴょん飛び跳ねる、いろんな意味で弾んでいる。

が、瞬間「あっ」と小声で呟き、バツが悪そうに両手で口を押さえる。
これはGARDENがコールサインを名乗るよう推奨している組織であり、誰にでも本名を簡単に名乗る癖を常々注意されていたからである。
少女は口を押えたまま恐る恐る老紳士を見上げた。
それを見て老紳士は微笑みながら


オズワルド(以下オズ):「ふっ、彼になら構わないよ。 ただし、気を付けたまえ」


と優しさを湛えた口調で諭す。
注意こそされたが、叱られたわけではなかったので少女は安心し、


???:「"アンノウン"椎名美紀です!」


テイク2を敢行した。


隼太:「よろしくでやんすよ!オズ殿」
隼太:「そしてミッキ・・・・なんか甲高い声が聞こえたような気がするでやんすからアンちゃんで」
隼太:(あの呼び方だと夢の国に姿を消すことになりかねないでやんす・・・!)


隼太はごまかすようにコーヒーをすすった。

・・・・・

矢田隼太の飲む関東支部のコーヒーは、やはり苦い。


千夏:「冷めてしまいましたね。今新しいのを淹れなおします」
隼太:「あ、ありがとうでやんす・・・」


隼太の様子を見かねたのか、千夏は飲みかけのカップを取ると、足早にシンクへ行き、砂糖とミルクが入ったものを何も言わず置く。


隼太:(気配り上手で美少女、まるでアニメから出てきたようでやんすね。)
隼太:(アンちゃんも可愛いし、スタイルもいいしこちらもアニメキャラの・・・ん?)


そこまで思考が進んだところで隼太は先ほど感じた美紀への既視感の正体に気づいた。
そう、隼太が先週ハマっていたアニメのヒロインにあまりにも酷似しているのだ!!


隼太:「むむむぅ!? 似ている、似ているでやんすよ!!」
美紀:「ほえ?」


隼太は美紀に詰め寄って確認するが、やはり似ていた。
そんな不審者めいた隼太の挙動に対し、美紀はよくわからず首を傾げる。
そこでようやく矢田は今の自分の状況にはっと気づいた。


隼太:「ああ、失礼したでやんす・・・アンちゃんが自分の視聴していたお気に入りアニメのキャラクターに似ていたもので・・・」
隼太:(初対面の女性にするようなことではなかったでやんす、怖がられなかったからよかったものの、)
隼太:(次からはこういうことはしないようn___)


矢田の思考はそこで途切れることになった。
なぜならそこまで考えた瞬間、何者かに胸倉を掴まれ引き寄せられたからである!!


隼太:「むぉお!?」
美紀?:「・・・おい。気持ち悪ぃ目で美紀を見やがったら、ケツに火の棒ぶち込むぞ」


何ということでしょう___ 先ほどまで目の前にいた小動物系少女が、隼太を威圧するように凄み、胸倉を掴むヤンキー少女に!?

瞳も深紅に濡れ、その怒りの炎が現れたかのよう!!


隼太:「アンちゃーん!!? 落ち着くでやんすよぉ!! 似ていたという感想を言っただけでやんすよ!!」
オズ:「『真紀』君。その辺にしておきなさい」


このやり取りを見かねたオズになだめられた『真紀』は舌打ちすると、隼太を離す。


オズ:「済まなかったね。隼太君」
隼太:「きゅ、急に俺様タイプな気の強い娘になったもんで面食らっちゃったでやんす・・・」


目を白黒させていた隼太が落ち着いたのを確認してから、オズは説明を始める。


オズ:「"彼女"は美紀君の姉君、"椎名真紀"だ」
オズ:「1年前に"不慮の事故"で命を落としてしまってね・・・ 妹の美紀君に人格と、超能力が宿るという類を見ない現象が起きているのだよ。」
オズ:「よく見ると、瞳が赤くなっているだろう? 瞳が赤い時は、真紀君だよ」

隼太:「なるほどでやんすね・・・・・じゃあ瞳が赤い時は『マッキー』でやんすね。」

オズ:「真紀君からは美紀君を認識できるが、その逆はできない」
オズ:「つまり、美紀君は自分に眠る真紀君の存在を知覚できないのだよ」
オズ:「どうか、美紀君には真紀君の事を黙っていてあげて欲しい」

隼太:「まあそこは当人達の問題でやんすからね・・・余計なちゃちは入れてはいけないでやんすね」

美紀:「あ、あれ? また私寝てました?」
隼太:「それは見事なまでの居眠りでやんすよ」
美紀:「ごっ、ごめんなさいい!」


隼太とオズが話をしている中で再び入れ替わったらしく、瞳が赤から青に変わる。
入れ替わっている間の美紀は自身が居眠りしていたと錯覚するようである。
そのまま錯覚させておいた方が良いと隼太は判断し、美紀の質問にYesを返した。


弦三:「本当は他にもメンバーがいるのだが、生憎出払っていてね・・・ 折を見て、挨拶してくれ」
隼太:「いずれは皆と会う機会があるでやんすからね、よろしくするでやんすよ」


隼太:(しかし・・・マッキー・・・このことは要警戒でやんすよ・・・)


隼太:(アンちゃんにコスプレ撮影をOKしてもらうにはマッキーとも仲良くなる必要があるというこでやんすからね・・・!!)


・・・・・隼太としてはアニメのキャラクターと瓜二つの人物が同じコスチュームを着ているというレアな写真を撮ってみたいという
下心のない(?)純粋な(??)気持ちからであると擁護しておく。


弦三:「さて、本題に入ろう___」


隼太が頭の中でプランを練っている中、隼太の関東支部最初の任務が始まろうとしていた___





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