SIMロック解除義務化の要旨


2014年10月 総務省は「モバイル創生プラン」を公表した。この中で、「モバイルは、我が国創生の切り札の一つ」と位置づけ、「もっと自由に、もっと身近で、もっと速く、もっと便利に、モバイルを利用できる環境整備が重要」であると、その基本的な考え方と個別政策を示した。SIMロック解除もその取組みの1つである。

現在、SIMロック解除に応じているのは、ドコモとソフトバンクのみ。auはSIMロック解除には一切応じていない。また、ドコモとソフトバンクについても全ての機種でロック解除に応じているのではなく、ドコモはiPhoneを除いた全てのスマホで、ソフトバンクは一般的に不人気とされる数機種でのみ有償によるSIMロック解除を行っている。

***人気機種iPhoneに関しては3社ともSIMロックの解除に応じていない。


しかし、総務省の発表では、2015年5月1日以降、新たに発売される機種について、キャリアは原則的に無料でSIMロック解除に応じなくてはならなくなる。また、解約可能な期間の延長や、更新月の通知の徹底について速やかに着手するようキャリアへ強く働きかけている。


以下は総務省『SIMロック解除に関するガイドライン(改正案)』の抜粋である。少し長く独特の言い回しもあり、理解しにくい表現もあるが確認してほしい。



『SIMロック解除に関するガイドライン(改正案)』



1 経緯及び目的


我が国では、現在、携帯電話等の電気通信役務を提供する電気通信事業者が販売する端末は、基本的に「SIM(Subscriber Identity Module)ロック」と呼ばれる設定がなされ、当該端末を販売する事業者のネットワークを利用しない事業者のSIMカードを差し込んで使用することができなくなっている。
これに対し、海外渡航時に渡航先の携帯電話会社のSIMカードを国内から持参した端末に差し込んで使用したい、携帯電話番号ポータビリティを利用して役務契約を締結している事業者を変更する際にこれまでの端末を使用したいなど、携帯電話利用者(以下「利用者」という。)の中にはSIMロック解除に対する要望が存在した。
こうした要望を踏まえて検討した結果、SIMロックが解除された端末に他事業者のSIMカードを差し込んだとしても通信方式、周波数、プラットフォームの仕様等の違いが大きい等の問題があったことから、平成22年に「SIMロック解除に関するガイドライン」を策定し、事業者の自主的な取組によるSIMロック解除の実施を求めた。
しかし、これまでのところ事業者によるSIMロック解除の取組は限定的である。また、SIMロックは利用者利便を阻害するだけでなく、他事業者のサービスへのスイッチングコストの増加や新規顧客獲得の際の多額のキャッシュバックの一因にもなっているとの指摘がなされている。
他方、近年のLTEやスマートフォンの普及といったモバイル通信市場の環境変化によって、事業者間の通信方式や端末の仕様等の共通化が進みつつある。
以上を踏まえ、本ガイドラインは、SIMロック解除に関する基本的な考え方及び具体的な運用方針並びに事業者等がSIMロックを解除する際に留意すべきと考えられる事項を改めて整理して示すものである。




                     (略)



3 基本的な考え方


電気通信事業法(昭和59年12月25日法律第86号)第29条第1項第12号は、電気通信事業者の事業の運営が適正かつ合理的でないため、電気通信の健全な発達又は国民の利便の確保に支障が生ずるおそれがあるときに業務改善命令を発動可能としている。
SIMロックは、端末を変更せずに役務を提供する事業者を変更したり、海外渡航時に現地国のSIMカードに差し替えて利用するといった利用者の行為を妨げ、その利便を損なうものであると言える。また、端末のSIMロックにより役務契約を変更する際のスイッチングコストが押し上げられることは、役務の料金やサービス内容の差別化による競争を阻害する要因になっている。さらに、新規顧客獲得の際の多額のキャッシュバックの一因となることにより、頻繁に事業者・端末の変更を行う利用者と長期利用者との間の不公平性も助長している。
他方、事業者からは、SIMロックを設定しない場合の懸念点として、
①端末が必ずしも他の事業者のサービスに十分対応していない点について利用者に混乱が生じるおそれがあること、
②SIMロックを設定した場合と比較して販売促進費を抑制せざるを得ないことにより、端末の価格が現状よりも高くなるおそれがあること、
③端末・通信サービスについて事業者独自のブランド戦略を進めるインセンティブが失われるおそれがあることが挙げられている。
しかしながら、上記①については、利用者に対し適切な説明をした上でその選択に委ねることが適当であると考えられる。②については、端末の価格相当分が毎月の通信料から割り引かれることが一般的な状況においては、利用者にとって大きな問題にならないと考えられる。なお、端末購入時のキャッシュバックの多寡との関係とすれば、まさに行き過ぎた多額のキャッシュバックについては利用者間の公平性や公正競争の観点から問題であるとの指摘があったものであり、 SIMロック解除によりこれに対し一定の抑制効果があることはむしろ望ましいと考えられる。③については、事業者独自のブランド戦略は、SIMロックという手段で利用者を強制的に囲い込むことによってではなく、端末の魅力を最大限引き出す通信サービスの開発・提供によって進めるべきものと考えられる。このように、いずれの懸念点についてもSIMロック解除に応じないことの適正性・合理性の根拠とは認められない。さらに、従来SIMロック解除に関する問題点として指摘されてきた通信方式や端末の仕様の相違等については小さくなりつつある。
以上を踏まえると、利用者(既に自社の役務契約を解約した利用者も含む。以下同じ。)からSIMロック解除の申し出があったにもかかわらず事業者が正当な理由なくこれに応じないことにより、電気通信の健全な発達又は利用者の利益の確保に支障が生じるおそれがあるときは、業務改善命令の要件(電気通信事業法第29条第1項第12号)に該当すると考えられる。
したがって、事業者は、次項に示す方法により、利用者の求めに応じてSIMロックの解除に応じることが適当である。



4 具体的なSIMロック解除の方法等


(1)対象となる端末
① 事業者は、原則として自らが販売した全ての端末についてSIMロック解除に応じるものとする。
② ただし、SIMロック解除を行わないことが公正な競争又は利用者の利便の確保に大きな支障とはならないと考えられるものについてはこの限りでない。
(2)SIMロック解除に関する手続
① 事業者は、可能な場合には利用者がインターネットや電話により手続を行えるようにするなど、迅速かつ容易な方法により、無料でSIMロックの解除を行うものとする。
② ただし、端末の割賦代金等を支払わない行為又は端末の入手のみを目的とした役務契約その他の不適切な行為を防止するために、事業者が最低限必要な期間はSIMロック解除に応じないことなど必要最小限の措置を講じることを妨げるものではない。



5 SIMロック解除に当たり留意すべき事項


(1)利用者への説明
事業者は、端末の販売時、SIMロック解除時及び役務提供に関する契約締結時においては、特に、次の事項について、店頭での説明、パンフレットやホームページへの掲載等により利用者が理解できるよう努めることが適当である。
a)端末の販売時
① 当該端末がSIMロック解除に対応する端末であるか否か
② SIMロック解除に係る条件及び手続
③ 他の事業者のSIMカードが差し込まれた場合に、通信サービス、アプリケーション等の利用の全部又は一部が制限される可能性が存在すること
④ 当該端末が対応している周波数帯及び通信方式
b)SIMロック解除時
① SIMロック解除に関する条件及び手続
② 他の事業者のSIMカードが差し込まれたときに、通信サービス、アプリケーション等の利用の全部又は一部が制限される可能性が存在すること
③ SIMロック解除した端末の故障・修理等に関する問合せ窓口

c)役務契約の締結時
使用される端末によっては、自社の提供するSIMカードが差し込まれたときに、通信サービス、アプリケーション等の利用の全部又は一部が制限される可能性が存在すること

(2)SIMロック解除した端末に関する利用者の問合せ窓口等の明確化
SIMロック解除した端末が故障した際等に利用者への対応が適切に行われるよう、端末を販売する事業者は、端末製造者等とあらかじめ協議し、 SIMロック解除した端末に関する利用者の問合せ窓口等を明確にすることが適当である。
(3)技術基準適合性の確認等
事業者は、利用者がSIMカードの差し替えにより技術基準等に適合しない端末を使用することのないよう、端末の技術基準適合性の確認について適切な措置を講じることが必要である。


                     (略)           

以上













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最終更新:2014年12月21日 10:11