―――四を超えて第五へ至るイカロスの仔―――

有瀬 行(but...it's called for convenience' sake)





「俺は、死なない――――。
 翔んでやる。夜を切り裂く閃光のように。真っ直ぐ、ただひたすら真っ直ぐ、アイツが願った夜明けを目指して。」





イメージBGM Eagle Eyes/Stonebank



曰く、”今は亡き親友の遺志を受け継いで、夜明けを目指して飛翔する”。
それ自体は見上げた気概だ。素晴らしい。

だが青年よ、哀しき哉。
人間の欲望に限りがなくても、度量という器は無限ではない。
分不相応な振る舞いを続ければ滅びを招く。奢侈や蛮勇がこれまで如何ほどの人間を殺してきたか、歴史に学べば明白だろう?

英雄の資質は残酷なまでに人を選ぶもの。
自分の心を引き裂いてまで、死した『彼女』の残影を追うとはね。嗚呼……それもまた、人の輝きかもなァ。

嗚呼、だが、しかしだね―――。

残念なことに、汝の眼がもっとも、どうしようもなく盲いている。




Si, quotiens homines peccant, sua fulmina mittat Juppiter, exiguo tempore inermis erit.
テトレーション
有 → ナ月 → 



イメージBGM2 ???







犀の角のようにただ独り歩め。

四方のどこにでも赴き、害心あることなく、何でも得たもので満足し、諸々の苦難に堪えて、恐れることなく、犀の角のようにただ独り歩め。

実に欲望は色とりどりで甘美であり、心に楽しく、種々のかたちで、心を攪乱する。欲望の対象にはこの患いのあることを見て、犀の角のようにただ独り歩め。

これはわたくしにとって災害であり、腫物であり、禍であり、病であり、矢であり、恐怖である。諸々の欲望の対象にはこの恐ろしさのあることを見て、犀の角のようにただ独り歩め。

貪ることなく、詐ることなく、渇望することなく、覆うことなく、濁りと迷妄とを除き去り、全世界において妄執のないものとなって、犀の角のようにただ独り歩め。

水の中の魚が網を破るように、また火がすでに焼いたところに戻ってこないように、諸々の結び目を破り去って、犀の角のようにただ独り歩め。

こころの五つの覆いを断ち切って、すべて付随して起る悪しき悩みを除き去り、なにものかにたよることなく、愛念の過ちを絶ち切って、犀の角のようにただ独り歩め。

妄執の消滅を求めて、怠らず、明敏であって、学ぶこと深く、こころをとどめ、理法を明らかに知り、自制し、努力して、犀の角のようにただ独り歩め。

音声に驚かない獅子のように、網にとらえられない風のように、水に汚されない蓮のように、犀の角のようにただ独り歩め。

貪欲と嫌悪と迷妄とを捨て、結び目を破り、命を失うのを恐れることなく、犀の角のようにただ独り歩め。


一切の生きとし生けるものは、幸福であれ、安穏であれ、安楽であれ。

いかなる生物生類であっても、怯えているものでも強剛なものでも、悉く、長いものでも、大きなものでも、中くらいのものでも、短いものでも、微細なものでも、粗大なものでも、

目に見えるものでも、見えないものでも、遠くに住むものでも、近くに住むものでも、すでに生まれたものでも、これから生まれようと欲するものでも、一切の生きとし生けるものは、幸せであれ。

何びとも他人を欺いてはならない。たといどこにあっても他人を軽んじてはならない。悩まそうとして怒りの想いをいだいて互いに他人に苦痛を与えることを望んではならない。

あたかも、母が已が独り子を命を賭けて護るように、そのように一切の生きとし生れるものどもに対しても、無量の意を起すべし。
最終更新:2019年04月27日 18:34