「愛しい人よ、どうか私のことを見て―――、
 嫌、やめて、私を見ないで―――。

 愛しい人よ、どうかこちらを振り向いて―――、
 嫌、決して振り向かないで―――。

 ごめんなさい。ごめんなさい。私はこんなに醜く汚穢(けが)れてしまった。
 貴方に触れたい。
 温もりが欲しい。
 けれど、触れたら貴方は穢れてしまう。貴方の輝きを穢してしまう。

 嗚呼、寂しい。ここはひどく凍えるの。
 愛しい貴男、どうか冥府へ降りてきて、私のことを連れ出して―――。」
最終更新:2017年02月08日 12:33