―――闇夜に光を灯すクラムネーカーの星―――

穂積 こころ









〝ぷるぷる わたし わるいこじゃ ないよ。だから いじめないでね。いたいの やだよ。〟

〝ばかって いうな! ばかって いったやつが ばかなんだよ! ばーか! しね! どていへん! しゃかいのごみ!〟

〝だいじょうぶ! わたしが そばに いるよ! いっしょに がんばってみよう?
 ほら てをつなげば もう なんにも こわくないよ。〟

〝とぶんだ、いたる。きみのこころを ちからにかえて。
 だれよりも まっすぐで なによりも まぶしくひかる―――― くらやみを つらぬく せんこうのように!〟

〝わたし、がんばったよ。なかないで さいごまで がんばったよ! わたし、いいこだった? いいこに、なれたかなあ・・・?〟



汝のような異物が、どうやってこの箱庭へと入り込んだのか……。
否、既に物語が幕開けてしまった今となっては、それを問い質すことに最早大した意味はあるまい。

良かろう。ならば存分に足掻くがいい。

だが心せよ、この舞台は完璧だ。
運行をなす歯車の一切、その一つとして寸分の狂いも生じはしない。
汝がどのような予定外(アドリブ)で場を乱そうとも、
演者然り、装置然り。全ては最後まで見事に噛み合いながら、必然の下、この世界を確実に”最悪の結末”へ……奈落の底に叩き落とす
と予言しよう。

故に―――嗚呼、そうとも。
汝のような、人間にもなれなかった半端な生命体に、我が公演の邪魔をさせはせんよ。







イメージBGM リトルグッバイ/ROCKY CHACK





陰陽不分――。
なるほど、条件は満たしているようね。

いいわ、力を貸してあげる。
あなたが星を、光輝を繋ぎなさい。奴の悪意に負けないよう、大きくて素敵な星座を描きなさい。
そして、もっとも救われない彼を、盲いた暗黒の淵から救い出してあげなさい。

すでに別たれてしまった私では、どうしたって片手落ちになってしまうことになるの。
私は奴にとって相克をなす特効の劇毒だわ。それは確かな事実。
でもね、それは彼我を入れ替えても同じ。
私達は相滅ぼし合う関係なのよ。それは即ち、この世界の…ひいては、連環する他次元をも巻き込んだ終焉を意味する。

だから、あなたが鍵。

自信がないの? もしかして、さっき奴に言われたこと気にしてる? 結構引きずっちゃうタイプなのね。
でも、大丈夫よ。
渾沌如鷄子、溟涬而含牙。
あなたは確かに未定形の渾沌だわ、形が定まる前に終わってしまった生命。
でも、だからこそ。この世界において、あなたという存在は、奴の設計した地獄をひっくり返しうる唯一の手となるの。



―――このろくでもない糞ったれな箱庭を、全部ぶち壊して、台無しにしてやりなさい。
最終更新:2017年02月07日 10:52